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問題だらけのCO2 1990年比25%削減公約

同志社大学商学部教授 田淵 太一

田淵 9月22日に行われた国連気候変動首脳会合で、鳩山首相は日本が2020年までに温室効果ガスを25%削減する目標を公約し、欧州諸国など各国から喝采を浴びた。国内でもマスコミを中心として歓迎するムードが強い。だが、この公約はさまざまな観点からみて暴論であり、ただちに撤回すべきものであることを以下に論じよう。

(1)「1990年基準」は外交交渉の失敗

 そもそも「1990年基準」を用いるということ自体、外交交渉において日本が欧州連合(EU)に完敗し続けていることを意味する。日本は石油危機以来、国を挙げての省エネ技術開発によって1990年にはすでに世界一のエネルギー効率を達成していた。これにたいしEU諸国のエネルギー効率ははるかに低かったうえに、さらに老朽設備を大量に抱えた旧共産圏諸国が加盟した。1990年を基準とすれば、EUは老朽設備を廃棄するだけで容易にCO2を削減できるのに対し、日本はばく大なコストをかけなければこれ以上の削減を進めることができない。限界削減費用(1トンのCO2を削減するのにかかる費用)を比較すれば明らかである。EUが掲げた20%削減目標は48ドルの限界削減費用で達成できるのに対し、鳩山首相が掲げた25%削減目標を達成するための限界削減費用は476ドルにのぼる。鳩山構想を実現するための負担は、1世帯当たり年22万円から77万円と試算されている。家計も産業も大きな打撃を受ける。

(2)反社会的で不道徳な「排出権取引」

 鳩山構想を実現するために有力視されている政策のひとつが「排出権取引」である。企業などのCO2排出主体にキャップ(排出枠)を配分し、キャップ以下までに削減を進めた企業は余った排出権を売り、キャップ以上に排出する企業は足りない排出権を買う、というメカニズムである。公平なキャップ配分が著しく困難であるうえ、排出権取引がファンドによる投機の対象となる恐れがあり、そのようなメカニズムを押しつけられれば、日本の製造業は投資意欲を失い、衰退を余儀なくされるであろう。
 排出権取引において、もともと無料であったCO2に人為的な価格を付けて市場で取引し、他人に我慢を強いることにより金儲けがなされるということ自体、不道徳である。たまたま割当量が自らの必要量より多かったときにそれを市場で売って儲けようとすることは、倫理的にも社会正義の観点からも許容できない、とする宇沢弘文・東京大学名誉教授の批判(WEDGE 2008年10月号)に全面的に賛同したい。

(3)根拠薄弱な「CO2温暖化原因説」

 IPCC(国際気候変動パネル)は、人為的に排出されたCO2が地球温暖化をもたらす主原因であるとする命題を科学的真実であるかのように喧伝(けんでん)し、それにもとづいて国際交渉が行われてきた。しかし、控えめに言ってもこの命題は仮説のひとつにすぎず、自明の事実であるかのように捉えるのは誤っている。大気中のCO2が増えるのは温暖化の結果、海洋からCO2が放出されるからであり、温暖化・寒冷化をもたらすのは太陽活動である、とする有力な反論もなされている(たとえば、エネルギー・資源学会のHPに掲載された「地球温暖化:その科学的真実を問う」を参照のこと)。太陽活動はすでに衰退期に入っているので、もし反論が正しいとすれば、現時点で温暖化でなく寒冷化が始まっていることになる。いずれにせよ、複雑な現象である気候変動を人為的に排出されたCO2という単一の要因から説明する仮説は説得力が弱く、やがて反証されざるを得ないだろう。近い将来、IPCCの「CO2温暖化原因説」が悪質な政治的キャンペーンであったことが判明する可能性は高い。

(4)COP体制は崩壊に向かうか

 結局、地球温暖化をめぐる国際交渉は、本気で地球環境を守ろうと国際協力を進める場などではなく、気候変動の名のもとに国際的な収奪を正当化する場であったにすぎない。これまでは、欧州が日本やこれから経済成長する新興国・途上国からの収奪を企図する構図であった。しかし、2009年12月にコペンハーゲンで開かれる第15回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP15)においては、世界金融危機をきっかけにG8がG20にとって代わられたことを背景にして地球温暖化問題をめぐる構図も逆転し、欧米に代わって新興国の利害が前面に出るようになったという観測がある(「田中宇の国際ニュース解説」2009年10月31日付)。鳩山構想はCOP15に向けて発せられた宣言であるが、鳩山首相のパフォーマンスにもかかわらず、局面は一変し、COP15で「京都議定書」の後継となる新条約が締結される見込みはほとんどなくなってきている。COP15が暗礁に乗り上げ、それをきっかけにして「CO2温暖化原因説」の虚偽が明らかになってゆけば、COP体制が崩壊に向かう可能性も十分にある。

(5)「京都議定書」が諸悪の根源

 根拠の薄弱な「CO2温暖化原因説」を自明の前提とし、EUの外交に翻弄されて「1990年基準」を用いることになり、問題の多い「排出権取引」がルール化されたのは、1997年に京都市で開かれた第3回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP3、地球温暖化防止京都会議)においてであった。

 COP3で議決された、排出権取引を主役とするメカニズムが「京都メカニズム」と名づけられ、それらを盛り込んだ議定書が「京都議定書」と呼ばれることは、京都の「恥」であると言わねばならない。恥ずべき「京都議定書」の延長上にある鳩山構想は拒否すべきであると京都の地から提起したい。

 さしあたって、WEDGE 2009年11月号の渾身の特集「CO2『25%削減』の問題点が丸ごとわかる」を必読文献として挙げておこう。


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