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朝鮮経済は飛躍への道筋をつけた

2010.2.15
京都総合研究所 佐々木道博

 私は過去1995年から訪朝を重ね、また2006年から2009年までは4回の訪朝とその度ごとに朝鮮経済学研究所所長李幸浩氏とのインタビューや討論を行い、各地の工場や農場、そして市場などを定点観測してきた。

 李幸浩氏の論点を要約すると
(1)1980年代後半の経済最盛期時まで生産と消費を回復させる。それが「2012年内強盛大国への大門を叩く」ということである。
(前回にも記した製鉄1000万トン、電力1000kwの生産能力、貿易40億ドル、そして食糧700万トンなどの目標である。貿易についてはすでに達成し韓国との貿易を含めれば2008年で57億ドルとなっている)
2009年5月時点では、その目標の70〜80%まで達成しているということである。
(2)2002年に経済調整を行い、市場での日用品などの取引(商品)を認め、人民への商品供給(主に輸入品、食料品)を認めたが、これはいずれ、国内生産によって、日用品等の供給が確保されるようになれば随時縮小する。われわれは中国の改革開放政策はとらない。あくまで、社会主義経済を堅持するとの考えである。

 こうした論点に留意しながら2007年以降の経済情勢を見ていくと2006年の核実験成功以来2007年より労働新聞等三紙共同社説からもみてとれるが、軍事優先から経済再建へと大きく舵を切り換えていることがわかる。核とミサイルの実験成功により、防衛力については、アメリカに攻め込まれる心配はほとんどなくなり、経済再建に集中できる環境が整い、いままで先軍政治で相当部分を軍事に使ってきた資源も人材も資金も経済に集中的に投下されてきていることが明白である。

 また、2008年より中国やエジプト(オラスコム社)など海外企業との合弁事業も積極的に推進し、ガラス工場やセメント工場などに100億円単位の資金が投入されている。

 16年間、工事がストップしていた柳京ホテルも建設工事が再開した。2009年5月時点ではすでに全面総ガラスがはられていた。(高さ350メートル、105階建てビル)

 また、2008年にはオラムコムテレコムが約400億円投入し、携帯電話事業を開始し、平壌市だけで、1年で10万人が契約使用している事が報道されている。数年後にはエリアを全国に広げつつ、数百万人の契約者を目指し、その達成にも会社として自信を持っているとの事である。

 その他食品工場やビール工場などが次々と稼働し、2004年時点では市場で売れている日用品や家電製品の80%以上が中国製といわれていたが、2009年には半分程度にシェアが落ちてきたと現地で聞いた。

 政治的にもすでにアメリカには金融制裁やテロ支援国家指定の解除をさせたせたし、彼らは力の政治と対話の政治をうまく組み合わせながら一歩一歩果実を積み上げている。今後は朝鮮戦争の停戦協定を平和協定に変えさせ、アメリカの「対北朝鮮敵視」政策をやめさせ、その上でアメリカや日本との国交を正常化させ、懸案の南北統一へ臨もうとしているのである。

 特に2009年は朝鮮の経済再建において大きな出来事があった。

 150日戦闘そして100日戦闘と続き、その中で重工業や電力部門で、生産力が11%伸びたと政府報道されているが、その数字は事実であろう。

ここ数年各地で中型、大型の発電所の竣工があいつぎ、現在さらに大型の水力発電所、火力発電所を建設中である。そうした産業基盤強化を元に、城津製鋼所において、コークスを使用せず(いままでほぼ全量を輸入していた)製鉄ができる新しい酵素溶解炉と製錬炉が完成し、実用化された。

 これにより朝鮮にある豊富な鉄鉱石と石炭だけで、大規模に製鉄が可能になったということである。この製鉄所だけで、生産が4〜5倍になるという。この鉄を称して朝鮮ではチュチェ鉄と銘名されている。この快挙は金正日総書記が「第3次核実験を成功させるよりも偉大な勝利だ」と高く評価している。

 それ以外にも5軸制御のCNC旋盤の開発や1万トンプレスの開発などなどいくつかの分野で画期的な技術革新がなされているのである。これに鼓舞された全国の企業所では、様々な工夫や技術革新で今までにない成果をあげている。

 先日、1月15日付 毎日新聞で報道された記事によると、昨年4月に打ち上げられた人工衛星ロケット(日本ではミサイルと大々的に報道されたが、アメリカNASAのHPには人工衛星ロケットの試験であると認めていた)の推進力が6分間で高度265キロメートルに達し、日本のH2Aロケットとほぼ同様であり、1998年のテポドン1号(人工衛星)より推進力が8倍になっていたことが日本の北大の日置教授の研究結果として、昨年12月アメリカの学会で報告されたとのことである。

 日本のH2Aロケットも40年間の歳月と3900億円の資金を投入し完成させ、またEUも1.5兆円を投入し、アリアンロケットを開発した。朝鮮は、これとほぼ同じ能力をもつロケットを自力開発していたわけである。ロケットは素材から、燃料、エンジン、コンピュータなどの総合技術の塊であり、朝鮮の科学技術はこの10年間著しく進展しているとみるのが妥当である。

 日本では10年1日のごとく脱北や食糧難、経済混乱ばかりを報道しているが、まったく事実を見ようとしない、悪質かつ意図的なものでしかないといえるだろう。

 2010年は労働新聞3紙共同社説では、
「人民生活を第一とする」というスローガンが掲げられ、軽工業や日用品の供給に全力を注ぐという方針が打ち出された。この数年間の重工業や電力生産にめどがつき、いよいよ日用品や住宅建築に注力できる態勢ができたということである。

 先年11月より断行したデノミもこうした一連の経済の動きの中にみることが必要である。1ドル=140ウォンという公定レートが、市場では1ドル=2800〜3000ウォンという法外な二重価格状態がここ5〜6年常態化していたが、これを正常化するためにデノミを断行し、一般人民から法外な収益をあげていた市場管理人や商売人に規制が入ったのである。政府としても若干の混乱は覚悟のうえで実行したのである。商品供給が不足していたので、それがほぼ自力生産の見通しができたことで、今回の断行に及んだのであろう。一般人民にとっては商品が安く買えるようになったので大歓迎であろう。一部の貿易で稼いできた商人や不正蓄財してきた人には打撃だったようである。また、今後、予想される海外貿易の増加に備えたものである。 そして1ドル=96ウォンという新しいレートが設定され、おしなべて1ドル=140ウォンの数年前と比べて25%〜30%切り上げとなっている。政府予算も25〜30%増となっているようであり、2007年8年9年の3年間でほぼ経済が25%〜30%増になったと私は結論づけている。

 2006年度アメリカCIAは朝鮮の一人当たりのGDPを1800ドルと発表し、韓国経済院は1000ドルあまりと報告している。中国内陸部や都市部でのGDP比較を30年前からみていた私の個人的な予測では朝鮮の場合、CIA予測の方がより実態に近いと思われ、2007〜2009年が25%〜30%伸びているので、現在約2500ドル程度ではないか。「2012年の強盛大国の大門を叩く」頃には3000ドルを少し上回っているのではないか推測できるのである。

 以上見たように、朝鮮の経済はようやく飛躍の軌道にのり、これから大きく伸びる可能性があると私は見ている。1990年代半ばには生産稼働率が30%程度に落ち込み、崩壊もささやかれていたが、現在ほぼ75%〜80%へと回復しているようだ。これは朝鮮の努力が大きいが、中国の経済大国化も寄与していると考察される。この原稿を執筆中にニュースがとびこんできたが、韓国連合ニュースによると「先日訪朝した中国共産党の王家端党対外連絡部長が北朝鮮に対して、100億ドル(日本円9000億円)以上の投資計画を約束した。」と伝えている。いよいよ中国が6カ国協議の主導権を確保し、東アジアの安全保障を積極的にリードしてゆく姿勢のあらわれであろう。国連の特使訪朝もこれに関係し事実上の制裁解除ということである。

 日本も2002年100億ドルの戦後補償をバネに対朝鮮政策を構築していたようであるが、すでに日本もアメリカにもその力はないということか。

 先に述べたように、朝鮮のロケット推進力は「テポドン1号」が飛距離3000kmといわれてきたが、この北海道大学の日置教授の研究によると推進力は約8倍になっており、単純に計算すると飛距離は24000km、アメリカのワシントン、ニューヨークは1000キロ余りであるが、それの倍以上をとばすことができるわけである。

 アメリカや日本はミサイル実験の失敗として報道しているが、アメリカの政府関係者や軍事専門家は皆知っていることであり、内心寒々としているのである。こうした情勢の下、朝鮮政府は余裕をもって、次の6カ国協議に臨み、自らの主張を最後まで譲ることはないとみるのが妥当といえるだろう。

 最後に
 中国を中心とする(報道では中国60%その他40%)100億ドル投資が既成事実として進行するなら、現在の朝鮮経済への一層の追い風になることはあきらかである。また、別の角度から見て、この朝鮮式社会主義が成功するかどうかも今後の世界に与える影響も大きなものがあるだろう。世界の資本主義が完全に行き詰まりをみせている中で大いに注目されていいだろう。

 今後とも朝鮮経済については一層の注視が必要だろう。

以上

東福寺 晩秋の東福寺


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